HTVシリコーンゴム(高温硬化型シリコーンゴム)とは?

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高温加硫(HTV)型シリコーンゴムは、加熱・加硫によって架橋構造を形成し、高い弾性と耐熱性を発揮するゴム材料です。HTVシリコーンゴムの主成分は、ポリジメチルシロキサンを主体とするシリコーン高分子(有機ケイ素高分子)です。骨格は強固なシロキサン結合(–Si–O–Si–)からなり、この結合エネルギーは約106 kcal/molと炭素-炭素結合(約85 kcal/mol)より高く安定です。

主鎖に沿ってメチル基などの有機基が結合しており、メチル基が自由回転できることで表面は疎水性を示し、離型性(粘着しにくさ)も発揮します。このような分子構造により、シリコーンゴムは無機材料と有機材料の両方の特性を併せ持ち、他の有機ゴムにはない様々な優れた性能を示します。

主な特性

HTVシリコーンゴムは以下のような特徴的性質を備えています。

耐熱性・耐寒性

約150℃程度の高温でも物性変化が少なく、また一般的な有機ゴムが脆化する低温(-20~-30℃以下)でもシリコーンゴムは弾力性を保ちます。一般に-60~-70℃程度まで硬化せず柔軟性を維持でき、高温側は連続使用で200~250℃程度(短時間なら300℃近く)に耐えるグレードも存在します。

熱劣化しにくく、高温下での力学特性保持率が高い点も特筆され、室温では強度が他のゴムより劣る場合でも高温下では性能低下が少なく逆転することがあります。

耐候性

シリコーンゴムは長期間屋外で紫外線や風雨に晒されても物性変化がほとんど起こらず、オゾンによる劣化も受けません。そのため過酷な環境下での耐久性(耐老化性)に非常に優れています。

電気絶縁性

シリコーンゴムは1~100 TΩ・mにも及ぶ高い絶縁抵抗率を持ち、広い温度・周波数範囲で安定した電気特性を示します。水に浸漬しても性能低下がほぼ見られず、高電圧下でのコロナ放電やアーク放電に対しても強い耐性を有するため、優れた電気絶縁材料となります。

難燃性

シリコーンゴム自体は燃えにくく、燃焼しても有毒ガスや黒煙を出しにくい特性があります。UL規格の難燃性グレード(UL94 V-0など)を満たす製品もあり、電線被覆や電子機器部品など安全性が求められる用途で用いられています。

耐薬品・耐油・耐溶剤性

シリコーンゴムは化学的に安定で、極性有機化合物や希酸・希アルカリによる腐食をほとんど受けません。特に高温環境下での耐油性に優れ、シリコーンゴムは100℃を超える条件ではニトリルゴムやクロロプレンゴムよりも油中での安定性が高くなります(逆に100℃以下では一般的な耐油ゴムに及ばない場合があります)。

一方で非極性の鉱物油や燃料油には浸漬で膨潤しやすく、用途に応じた材料選択が必要です。

その他の特性

シリコーンゴムは圧縮永久歪み(圧縮後の戻りの悪さ)が低く、-60℃~+250℃の広範囲な温度で圧縮特性が安定しています。また透明性が高いので着色が容易であり、食品衛生用途などでは無着色の透明~半透明品や各種着色品が利用できます。生体適合性にも優れ、医療用途で長期使用しても物理化学的特性が劣化しにくいことから、生体適合材料としても評価されています。

主な用途(産業分野と具体例)

HTVシリコーンゴムはその耐熱性、耐候性、電気絶縁性などの特質からほぼ全ての産業分野で活用されています。以下に分野ごとの主な用途例を示します。

自動車・輸送機器

エンジンルームや過給器周辺のシール材(ガスケット、Oリング)、点火プラグブーツや高圧イグニッションケーブル被覆、ラジエーターホースやインタークーラーホースなど、高温や耐寒・耐油が要求される部品に使用されます。また、防水コネクタシールや各種ゴムダイヤフラムにも用いられます。

電気・電子機器

優れた電気絶縁性と耐熱性から、モーターや家電製品のリード線被覆、高圧ケーブルの絶縁チューブ、電子レンジの扉パッキンや加熱器具のガスケット、プリンター・コピー機の加熱ローラー(定着ロール)などに使用されます。また、キーボードやリモコンのシリコーンキーパッド、電子機器用グロメット(配線通しブッシュ)やコネクタシールなど、耐久性と絶縁性が必要な部品にも広く使われます。

食品・日用品

無味無臭で耐熱・耐寒に優れるため、調理器具や食品加工分野でも活躍します。例えば電気釜・炊飯器・ポット等のパッキン(耐スチーム性・耐塩素水性)、オーブン用シリコーン型やケーキ型、ベーキングマットなどの製菓用品、電子レンジ用耐熱シリコーン容器、哺乳瓶の乳首や食品容器のシール材(食品衛生適合のシリコーンゴム)が挙げられます。

医療・ヘルスケア

シリコーンゴムの生体適合性と耐熱滅菌性を活かし、医療用チューブ、カテーテル、シリコーン栓、人工臓器部品などに用いられます。また、医療機器のシールや人工呼吸器マスク、歯科用のマウスピース等、衛生面と柔軟性が重要な用途にも使われます。

航空宇宙・防衛: 極端な温度変化や厳しい環境下で安定した性能を発揮するため、航空機の窓枠シールやドアガスケット、ロケット・人工衛星のシール材、航空用ワイヤーハーネスの被覆、軍用車両の振動絶縁ダンパーなどに採用されています。高高度や宇宙空間での耐放射線性や耐寒性にも優れる特種シリコーンが用いられます。

建築・建設

耐候性と耐久性から、建物の窓枠・扉の気密パッキン、外装パネルやファサードのシール材、耐震用構造接着剤(ただし接着剤用途ではRTVシリコーン系も多用)などに使用されます。また高層ビルのカーテンウォール接着や道路橋の伸縮継手材にも、特に耐久性要求が高い場合にシリコーンゴム系材料が選ばれます。

産業機械・その他

様々な製造装置や機械部品にも使われます。例えば、製鉄やガラス工場の高温工程用シール、ソーラー発電設備の耐候性ホース、低周波治療器の電極パッド(電気伝導性シリコーン)、印刷機や紙工機械のロール、コンベアベルト、耐熱パッキン類、スポーツ・レジャー用品(ダイビング用マスクやシュノーケルのマウスピース等)など、多岐にわたる用途があります。「ほとんど全ての業界で広く使用」されていると言っても過言ではありません。

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