ニッシリはシリコーン一筋「70年」
シリコーンゴムと樹脂の試作~中量生産をサポートします。
ウォータージェット加工

ウォータージェット加工とは、高圧の水を細いノズルから噴射して素材を切断する加工方法です。超高圧ポンプで水を最大数千気圧まで加圧し、直径0.1mm程度のノズルから音速の約3倍にも達する高速水流を噴射します。この水流のエネルギーによって材料を削り取るように切断し、工具が直接触れずに加工できます。
ニッシリでは特にシリコーンゴムの試作用途でウォータージェット加工を活用します。ウォータージェット加工には、水だけで切断する方法と、研磨材を混ぜて切断力を高める方法の2種類があり、シリコーンゴムのような比較的柔らかい素材の場合は水のみで十分加工可能です。
特徴
熱の影響がない
切断時に熱を発生させないため、レーザー切断のような熱による劣化や歪みが起こりません。シリコーンゴムの物性(弾力・耐熱性など)も維持されます。
切断面が滑らか
ウォータージェットはバリ(切り粉)や粉塵が出ず、水で洗い流されるためエッジが滑らかになります。シリコーンゴムのような柔らかい材料でも高い寸法精度で切断でき、断面は非常に滑らかに仕上がります。
厚みのある材料も切断可能
高いエネルギーを持つ水流により、厚手の板材でも一度で切断できます。例えば数十mm厚のシリコーンゴムでも垂直に精密切断でき、刃物による切断で起こりがちな断面の斜めズレが生じません。
ご活用いただいているケース
板材の加工
板材・シート材のシリコーンゴム材料の切断加工に適しています。必要に応じて複数枚のシートを重ねて同時に切断することもでき、例えば0.5mm厚のシートを10枚重ねれば一度に10個分を加工できるため効率的です。
複雑形状や微細加工
コンピュータ制御により自由な軌跡で切断できるため、内径のあるリング状部品や複雑な輪郭形状の部品加工に向いています。材料の端からでなく任意の位置から切り始めることができるので、部品内部に丸穴や角穴などを開ける加工も一度で可能です。
試作・小ロット生産
CADデータさえ用意できれば即日でも加工が可能なため、製品開発時の試作製作に適しています。金型不要のメリットもあります。製品一点ごとにプログラムで切るため、1個から数百個程度の少量生産でも初期費用を抑えられます。
主な用途
シール部品
シリコーンゴム製のパッキン、ガスケット、Oリングなどのシール類は、多くの業界で使われています。例えば自動車エンジン周辺のガスケット、空調機器のシール、産業用ポンプのガスケットなど、高温や耐候性を要求される箇所にシリコーンゴムが採用され、その加工にウォータージェットが活かされています。
医療分野
シリコーンゴムは生体適合性が高く医療用途に多用されます。ウォータージェットはその高い清浄度と精度から医療機器部品の加工にも最適とされています。例えば医療機器内のシリコーン製パッキン、人工呼吸器や輸液ポンプのシールが該当します。
電気・電子機器
電子機器や家電にもシリコーンゴム製品が数多く使われており、ウォータージェットで加工された部品が組み込まれています。例えば防水・防塵のための筐体シール、キッチン家電(オーブンや炊飯器など)の耐熱パッキン、照明器具の防水ガスケット、電子機器の耐震用ゴムシートなどです。
他の加工方法との比較と使い分け
「トムソン(打ち抜き)加工」との比較
トムソン加工は専用の刃型(金型)を用いてプレス機で打ち抜く方法で、一度のストロークで多数の部品を高速生産できます。量産では一品あたりのコストが非常に低く、大量生産のパッキンやシール製造に適しています。
一方で、トムソン加工は刃型を製作する初期コストが必要で、複雑すぎる形状や微小な穴には対応困難な場合があります。そのため、数量の少ない試作や小ロット、さらに微細加工が必要な場合はウォータージェット、大量生産の場合はトムソン加工を選択することになります。
豆知識
ウォータージェットは非熱加工
ウォータージェットは典型的な非熱加工です。熱影響がないため「熱影響部(HAZ = Heat Affected Zone」が生じず、素材の組成や硬さが変わることがありません。また刃物のように接触力を加えない非接触加工のため、加工中に素材へ機械的ストレスが加わらない利点もあります。
切断幅
ウォータージェットで素材を切ったときにできる溝の幅は、ノズル径や加工条件によりますが、概ね水流径よりやや大きめです。例えばノズル0.2mmなら切断幅は約0.3~0.4mm程度になります。レーザー切断の最小幅(約0.1~0.2mm)と比べると若干大きいものの、十分細いので大半のゴム部品には問題になりません。ただし非常に密集した微細パターンを切り出す場合は、この水流径による最小コーナーR(角の最小丸み)が制約になることがあります。設計段階でノズル径を考慮する必要があります。
純水式 vs アブレシブ式
水だけで切断する方式を「純水式」、砂などの研磨材を混ぜて切断力を高める方式を「アブレシブジェット」と呼びます。純水式はゴム・プラスチック・食品など軟らかい素材向き、アブレシブ式は金属・ガラス・石材など硬い素材向きです。シリコーンゴムの切断は通常純水式で行われます。
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