- 2026年7月9日
- 更新日:2026年7月9日
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シリコーンゴムとは?種類・成形方法・用途別の選び方を解説

シリコーンゴムを使った部品の設計や調達を検討するとき、「どの硬化方式が用途に合うか」「射出成形と圧縮成形はどう使い分けるか」「耐熱性や絶縁性の数値は十分か」といった疑問を持つことは少なくありません。
シリコーンゴムは材料そのものが多様なうえ、加工・成形方法の選択が最終性能を大きく左右します。製品グレードや硬化方式の違いを把握しないまま加工を依頼すると、硬化不良や接着トラブル、寸法精度の問題に直結することもあります。
この記事では、製造業の設計・調達担当者向けに、シリコーンゴムの化学的な成り立ちから特性、種類、代表的な加工・成形方法、用途別の選定ポイントまでを整理します。材料選定と加工発注の精度を上げるための参考としてご活用ください。

シリコーンゴムとは
シリコーンゴムは、Si-O-Si からなるシロキサン結合を主骨格とする有機ケイ素高分子に、ゴム弾性を示すよう配合・硬化させた材料です。見た目は柔らかなゴムですが、分子の骨格は一般的な有機ゴム(炭素-炭素結合が主鎖)とは根本的に異なります。天然に存在しない、人工合成された有機ケイ素高分子です。
なお、元素としてのシリコン(ケイ素)と、材料としてのシリコーン(有機ケイ素化合物)は別物です。半導体材料に使われる元素がシリコンであり、シリコーンはポリマー材料です。
この骨格の違いがシリコーンゴム特有の性質を生み出しています。Si-O 結合エネルギーは 444 kJ/mol であり、C-C 結合(356 kJ/mol)を大きく上回ります。このため、熱・紫外線・オゾンに対する安定性が有機ゴムよりも高くなります。またシロキサン結合は結合長が長く結合角も大きいため、分子鎖の回転自由度が高くなり、低温でも硬くなりにくく圧縮追従性を確保しやすいという特性が生まれます。分子表面に並ぶメチル基などの有機基が、撥水性や離型性を生み出します。
製造面では、ケイ石を還元した金属ケイ素とメタノール由来の塩化メチルを銅触媒存在下・280〜300℃で反応させてメチルクロロシランを合成し、加水分解・重合を経てシロキサンポリマーを得ます。その後、充填剤・架橋剤・添加剤を加えて未硬化コンパウンドに仕上げ、成形・架橋の工程を経て最終製品になります。最終性能は主鎖構造だけでなく、架橋方式・充填剤・加工条件に大きく依存します。

シリコーンゴムの主要特性
シリコーンゴムは「柔らかい耐熱ゴム」という一言では収まらない多面的な特性を持ちます。熱・低温・電気絶縁・光学・撥水離型など広い領域で高い性能を示しますが、機械強度や耐薬品性は配合に強く依存するため、万能材料ではないという前提を踏まえた上で評価することが重要です。
幅広い温度域でゴム弾性を維持する
シリコーンゴムは -60〜+250℃の範囲で使用でき、連続使用においても -40〜+180℃の広い温度域でゴム弾性を維持します。Si-O 主鎖の安定性と分子運動性がこの広い使用温度域の基盤です。耐熱・耐寒の両立が必要な用途では有力な選択肢になりますが、実際の使用温度上限はグレード・使用時間・荷重・雰囲気によって変化するため、個別設計では実測による確認が必要です。
機械強度は配合依存、補強フィラーが重要
シリコーンゴムは高い伸びと柔軟性を持ちますが、機械強度は配合に大きく依存します。充填剤がない場合は機械的・熱的・電気的特性が不十分になることがあるため、工業用途ではシリカなどの無機フィラーによる補強が欠かせません。引張強さ・伸び・引裂強さ・圧縮永久ひずみ(圧縮後に元の厚みに戻らない割合)はグレードによって広い範囲に分布します。シール材として長期密封性を求める場合は、圧縮永久ひずみの小さいグレードを選ぶことが基本です。
高い絶縁性を長期間維持できる
シリコーンゴムは高い電気絶縁性を持ち、ケーブル・変圧器部材・高電圧部品・ポッティング材・LED 封止など幅広い電気・電子用途で使われています。湿熱や高温暴露後も電気特性を維持する耐久性があり、温湿度変化を受ける電装部材での実務的な利点になっています。
撥水・離型性に優れるが、耐薬品性は要確認
シリコーンゴムは化学的安定性が高く、低い表面エネルギーによる撥水性と離型性を示します。一方で、強い酸化剤との反応には注意が必要です。油・燃料・溶剤・洗浄薬品に対する耐性は配合や媒体によって差が大きいため、耐薬品性を「シリコーンだから安全」と一般化せず、必ず用途条件で個別に評価することが重要です。
シリコーンゴムの種類と硬化方式
「固形か液状か」「どの硬化方式か」「どのグレードか」の組み合わせで整理すると、実務での技術選定がしやすくなります。
付加硬化型と縮合硬化型の使い分け
付加硬化型は加熱によって硬化し、副生成物を生じないタイプです。寸法精度や低汚染性が求められる精密部品に向いています。白金触媒を使用するため、アミン・硫黄・リン化合物・有機スズなどによる硬化阻害を管理する必要があります。
縮合硬化型は大気中の水分を利用して室温で硬化し、硬化時にアルコールなどを副生します。室温硬化や簡便な施工が求められる場面に適しています。
固形(高粘度)の熱硬化型シリコーンゴムである HCR(High Consistency Rubber:高粘度熱硬化型シリコーンゴム)には過酸化物加硫系と白金触媒系があり、用途に応じて使い分けます。
固形(HCR)と液状(LSR)の違い
固形コンパウンド(ミラブル型・HCR)は押出成形・圧縮成形に広く使われ、チューブ・ガスケット・プロファイル材などの長尺・断面制御部品に適しています。
LSR(Liquid Silicone Rubber:液状シリコーンゴム)は LIMS(Liquid Injection Molding System:液状シリコーンゴム射出成形システム)で使われ、高速硬化・低圧射出・自動化が特徴です。医療・電子・コネクタ・光学部品など、精密で安定した品質が求められる用途に有利です。
RTV(Room Temperature Vulcanizing:室温加硫型)は室温で硬化するタイプで、湿気硬化型などがあります。
グレードは用途から逆算して選ぶ
実用グレードは汎用・耐熱・難燃といった基本系のほか、低圧縮永久ひずみ・熱伝導・高透明・フルオロシリコーン・自己接着など用途特化型のグレードが揃っています。「シリコーンゴムが向くか」という判断だけでなく、「どのグレードが向くか」まで落とし込まないと適材適所にはなりません。
主な加工・成形方法の種類
射出成形(LIMS):精密・自動化に向く
LIMS は液状シリコーンゴムを用いる高精度射出成形システムです。付加硬化型による高速硬化・低圧射出・フラッシュレス成形・自動化が特徴で、人手を減らしながら安定した品質を求める医療・電子・精密シール部品の製造に適しています。
押出成形・圧縮成形:長尺・断面形状に強い
HCR や固形コンパウンドを使う加工方式で、チューブ・ガスケット・プロファイル材・スポンジ・シールなど、長尺・特定断面の部品製造に広く使われます。
注型・型取り・真空注型:試作と小ロットに有効
型取り用途では注型・ラミネーション・反転型・真空注型が使い分けられます。真空注型は欠陥の少ない精密部品複製に有効で、少量試作・美術工芸・精密鋳造・家電試作などへの応用があります。シリコーンゴムは量産材料としてだけでなく、試作段階の転写媒体・型材料としても重要な役割を担います。
接着・表面処理:工程側か材料側かで選ぶ
シリコーンゴムは低表面エネルギーのため、他材への接着が難しい場合があります。金属・ガラス・プラスチックへの接着ではプラズマ処理や液状プライマーによる表面処理が有効です。一方、近年は自己接着グレードの開発が進み、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やポリカーボネート・金属などにプライマーなしで接着できる材料も登場しています。「工程側で表面改質するか」「材料側で接着機能を持たせるか」の二択で考えると整理しやすいです。
3Dプリンティング:型なしで複雑形状の試作・小ロットに対応
UV硬化型LSRを使った3Dプリンタ向け液状シリコーンや、光造形法(SLA系)を応用した手法が開発されており、複雑な形状の部品を型なしで造形できます。成形型の製作コストや納期を省けるため、試作・少量生産・形状検討フェーズに向いています。材料の選択肢や造形精度は成形系の加工法と比較するとまだ発展途上ですが、形状自由度の高さは大きな利点です。
切削加工:ブロック材・板材から精密形状を削り出せる
シリコーンゴムブロックや板材を旋削・フライス・エンドミルなどで切削する加工方法です。金属加工と異なり、材料の柔軟性による変形を抑えるための固定方法と切削条件の管理が重要になります。比較的シンプルな形状の試作品や、少量の機能部品を型なしで素早く仕上げたい場面に向いています。
プロッター加工:型なしでシートから平面形状を多品種カット
カッティングプロッターを使い、シリコーンゴムシートをCADデータに基づいて切り抜く加工方法です。型を製作せずにデータ変更だけで形状に対応できるため、ガスケット・パッキン・シート部品の少量多品種製造に向いています。平面形状への対応が前提になりますが、刃の設定と送り速度を適切に管理することで、断面の品質を安定させられます。
ウォータージェット加工:熱影響なしで複雑な平面形状を精密切断
高圧水流によってシリコーンゴムシートや板材を切断する加工方法です。切断時に熱が発生しないため、熱による変形や材料特性の変化を避けられます。複雑な輪郭形状にも対応できるため、ガスケット・パッキン・シール部品など、シート素材から精度よく切り出したい用途に有効です。
用途別の設計ポイントと注意事項
シリコーンゴムは自動車・電子・医療・建築・日用品と幅広い分野で使われますが、重視する特性は用途によって大きく異なります。材料選定は必ず用途から逆算して行うことが基本です。
| 用途分野 | 重視される代表特性 | 代表的な加工法 | 実務上の注意点 |
| 自動車・輸送機器 | 耐熱・耐寒、耐候、絶縁、光学、長期信頼性 | 射出成形、押出成形、圧縮成形 | 電装周辺での絶縁と放熱の両立、低揮発化の確認が重要 |
| 医療・ヘルスケア | 生物学的評価適合、衛生性、柔軟性、滅菌耐性 | 射出成形、押出成形、圧縮成形 | 一般工業グレードと医療向けグレードを混同しないことが必須 |
| 電気・電子 | 体積抵抗率、絶縁破壊強さ、光透過性、耐湿熱 | 射出成形、注型、ポッティング | 高温老化・湿熱後の電気特性保持を確認する |
| 建築・土木 | 耐候性、追従性、防水性、耐UV・耐オゾン | 押出成形、現場施工、接着・シール | 下地適合・長期耐候・施工条件を事前確認する |
| 日用品・食品・試作 | 離型性、加工性、寸法精度、衛生性 | 圧縮成形、射出成形、注型、真空注型 | 使用温度域・抽出物・臭気の確認が実務上重要 |
特に医療用途では、「シリコーンゴムは安全な材料」というイメージを製品全体に一律適用してはいけません。ISO 10993-1(医療機器の生物学的安全性評価)の枠組みに基づく評価が必要であり、安全性は材料名ではなく製品仕様と用途条件で判断します。一般工業向けグレードは医療・外科・人体埋植向けには設計されていないため、グレードの混同には十分な注意が必要です。
また、電動化・EV の普及に伴い、自動車分野では絶縁・放熱・光学・難燃・長期信頼性を同時に満たす設計の重要度が高まっています。熱伝導グレードや難燃グレードへの需要は今後も拡大が見込まれます。
シリコーンゴム加工のトラブルと対策
硬化しない・部分的にベタつく
付加硬化型で最も多いトラブルが硬化阻害です。アミン・硫黄・リン化合物・有機スズが代表的な阻害要因ですが、クロロプレンゴム・アミン硬化エポキシ・PVC絶縁テープ・ロジン入りフラックスなどの周辺材料も阻害を引き起こすことがあります。対策は材料ロットの切り分けより先に、治具・洗浄剤・手袋・作業環境・保管条件を点検し、少量試験で阻害の有無を確認することです。
接着しない・界面で剥がれる
工程側での対策はプライマー・プラズマ処理・コロナ処理・洗浄が有効で、材料側での対策は自己接着グレードの活用になります。どちらのアプローチを採るかを先に決めてから工程設計を進めると整理しやすいです。
気泡・ボイド・寸法不良
注型・型取りでは脱泡不足による気泡残りが頻出します。真空注型が気泡を防ぐ有効な手段で、型の剛性が不足している場合は石こうや樹脂によるバックアップ材で補強します。脱泡不足には真空処理、型剛性不足にはバックアップ材というのが基本的な対策の方向です。
圧縮永久ひずみ・経年劣化
長期使用では圧縮永久ひずみの増加・表面酸化・薬液による劣化が課題になります。対策としては低圧縮永久ひずみグレードの選択、実使用媒体での浸漬試験、熱老化試験が必要で、電気用途では絶縁特性の経時測定も合わせて実施することが重要です。
シリコーンゴム部品の加工依頼はニッシリのシリコーンゴム加工サービスへ
シリコーンゴムの特性を最大限に引き出すには、材料グレードの選定と成形方式の組み合わせを適切に設計することが欠かせません。
ニッシリのシリコーンゴム加工サービスでは、シリコーンゴムを使った部品の加工・製造に対応しています。素材の特性や用途条件に応じた成形方式の選定から、試作・量産まで幅広いニーズに応えています。シリコーンゴム加工の発注先をお探しの場合は、まず以下のページでサービス内容をご確認ください。
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