- 2025年9月20日
- 更新日:2025年9月29日
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加工方法
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バイオプラスチックの試作工法解説

環境負荷を低減する素材として注目を集める「バイオプラスチック」。従来の石油由来プラスチックに比べ、再生可能資源を原料とする点や生分解性を備える点から、包装材・日用品・工業部品など幅広い分野で採用が広がっています。しかし、量産前の試作段階では、素材特性に応じた工法の選定や加工条件の調整が欠かせません。一般的なプラスチックと同様の手法が使える場合もあれば、熱や吸湿に弱い特性ゆえに特別な配慮が求められるケースも多くあります。
本記事では、射出成形・押出成形・3Dプリンティングなど、バイオプラスチックを用いた代表的な試作工法を紹介し、それぞれのメリット・課題・適用事例について整理します。新しい素材の可能性を検討する際の参考にしていただければ幸いです。
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試作工法の解説
3Dプリンティングによる試作
近年、バイオプラスチックの試作で注目を集めているのが3Dプリンティングです。特にFDM方式(熱溶解積層法)ではPLAフィラメントが広く利用されており、金型を用いずに形状検証ができるため、初期段階でのデザイン検討に適しています。
ただし、積層方向の強度が弱い点や、吸湿によるフィラメント劣化のリスクがある点には留意が必要です。また、量産を前提とした材料特性の検証には不向きな場合が多く、射出や押出での確認を最終的に行うことが求められます。
一方で、近年はPHAやブレンド樹脂など、PLA以外のバイオプラスチックフィラメントも登場しており、用途ごとの可能性は広がっています。小ロット製造や試作治具の製作にも有効活用できる領域です。
射出成形による試作
射出成形は、量産と同じプロセスで試作ができる点が最大の利点です。寸法精度や外観を評価する際に適しており、量産移行を見据えた試作では欠かせません。ただし、バイオプラスチックは熱安定性が十分でない材料が多く、シリンダー内での滞留や過熱によって分解が進むリスクがあります。特にPLA(ポリ乳酸)は200℃前後で急速に分解が始まるため、射出条件の最適化が必須です。
また、金型設計においてはゲート位置や流動性に注意が必要です。バイオプラスチックは流動性が低い材料も多く、ウェルドラインやヒケなどの外観不良が出やすいため、CAEによる流動解析を活用することが望まれます。
また、射出成型での試作は、金型を製作する必要があるため、イニシャル費が高くなってしまうことがデメリットです。
コストを軽減した簡易金型(カセット金型)や、次にご紹介するエポモールドの使用を検討するのも良いでしょう。
エポモールドによる試作
エポモールドはニッシリが開発した安価な射出成形の工法です。
安価な樹脂やアルミ製の金型を使用することが最大の特徴で、簡易的な成形機を用いて成形を行います。
耐久ショット数は低く、精度も通常の金型に比べて高くはありませんが、通常の半額以下の金型費用で試作が可能です。
新しい材料でのサンプルが少量だけ必要な際にはコストメリットを発揮します。
押出成形による試作
シート材・フィルム材・チューブなどの用途では、押出成形による試作が有効です。射出成形と比べるとシンプルな装置構成で加工でき、イニシャル費も射出成形と比較して安価なことがメリットです。
ただし、押出成形では溶融樹脂が連続的にシリンダーを通過するため、粘度特性が不安定なバイオプラスチックでは表面にムラや気泡が発生しやすくなります。特にデンプン系やPHA系の材料は温度ウィンドウが狭いため、加熱ゾーンごとの温度制御を丁寧に行う必要があります。
また、冷却工程にも注意が必要です。PLAは結晶化速度が遅いため、冷却条件が不十分だと変形や寸法不安定が生じます。水槽冷却やテンション制御を適切に行うことで、成形品の安定化が可能になります。
真空成形・圧空成形による試作
シート材からの加工では、真空成形や圧空成形による試作も選択肢となります。包装材や容器分野で多用される工法であり、PLAシートやブレンドシートを加熱し、型に密着させて成形します。比較的簡易な設備で実施できる点が利点ですが、シート自体の物性や厚み分布に左右されやすく、量産条件に近い再現性を得るには工夫が必要です。
まとめ
バイオプラスチックの試作は、従来樹脂と同じ設備を使える場合もあれば、熱安定性・吸湿性といった特有の課題に直面する場合もあります。射出成形では分解防止、押出成形では温度と冷却制御、3Dプリンティングでは材料劣化対策、真空成形ではシート品質管理がポイントです。
技術者が試作の初期段階でこれらの特徴を理解しておくことで、スムーズな量産移行と材料選定の精度向上につながります。
バイオプラスチックは単なる「環境対応材料」ではなく、設計自由度や新しい用途展開を切り開く可能性を持った素材です。試作工法を正しく選び、課題を早期に抽出しておくことが、次世代製品の競争力を左右する重要なステップとなるでしょう。
バイオプラスチックの試作はニッシリへご相談ください。
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